細く痩せ切った月が、今にも落ちそうな角度で夜に引っかかっている。
今週のお題「読んでよかった・書いてよかった2024」
今年もたくさん読んだ。
同じ本を。凪良ゆう先生の「流浪の月」を。
2019年8月、東京創元社より単行本が刊行。
2020年4月、第17回本屋大賞受賞。
2022年2月、東京創元社創元文芸文庫より文庫版が刊行。
2022年5月、李相日監督による広瀬すず、松坂桃李主演にて映画化。
流浪の月との出会いはたまたま入った書店の本屋大賞紹介コーナー。
あらすじや内容で選んだというより、装丁の美しさに惹かれ購入した。
帰宅後に表紙を開いたら、休憩も水分補給もご飯も忘れ熱中したことを昨日の事のように思い出せる。
それほどまでに衝撃を受けた1冊。
主人公、家内更紗は市役所勤務の父、自由奔放に生きる母のもとで過ごしていた。
家族3人で幸せに過ごしていたが、父が病により他界、母に見捨てられた更紗は母方の叔母の家に引き取られることになった。
更紗は叔母の息子、孝弘から虐待を受けており、学校が終わると近くの公園で過ごしていた。
そこには小学生からロリコンと呼ばれる大学生の文がいた。
孝弘からの虐待に耐えかねていた更紗が雨の降る中、公園で本を読んでいたところ、見かねた文は傘を差し出す。
更紗の事情を聞いた文は、自宅のマンションに招き入れ、更紗は自分の意思で行くと決めた。
更紗は文のもとで何不自由なく約2ヶ月過ごした。
その間、更紗は行方不明として全国報道されていたが、その報道も落ち着いてきた頃、更紗は文に動物園に行きたいと言う。
更紗は文が通信販売で買ってくれたワンピース、文のマンションにきた時に履いていたピンクの運動靴を履いて、文はサングラスをかけて変装らしきことをして外出した。
動物園に一緒に来た文と更紗だったが通行人により警察に通報され、文は誘拐犯として逮捕されてしまう。
文と離れたくなくて泣き叫ぶ更紗の姿は居合わせた人たちの携帯などで撮影・拡散されていった。
更紗は小学生ながら傷物にされた可哀想な女の子として
文はロリコンで凶悪な誘拐犯としてレッテルを貼り続けられる。
二人の関係性は周囲の思うものとは全く違うものであったにも関わらずに。
そして事件から15年後、24歳になった更紗は偶然、文と再会する。
事実と真実は違う。
傍観者と当事者ではここまでの齟齬があるのか。
良かれと思って、自分の知る事実のもと当事者を見る傍観者。
可哀想な目が嫌で真実を伝えられない当事者。
家族ではない、恋人でもない。
世界が私たちをどんな目で見ようが、真実を知る人のもとに居たい。
そんな2人の、2人だけの物語。